お茶の科学(サイエンス)

茶成分の生体膜に対する親和性(1)


静岡県立大学食品栄養科学部

熊澤 茂則


 最近、緑茶中に含まれる主成分であるカテキンがいろいろな病気の予防に効くことが次第に明らかになってきました。特に、ガンや高血圧、動脈硬化などの生 活習慣病に効果があることが、動物実験や培養細胞などを用いた研究によって確認されています。また、緑茶は、風邪の予防や、虫歯菌や食中毒菌に対する殺菌 作用があることも分かってきました。
 茶カテキン類には、化学構造の異なるエピガロカテキンガレート(EGCg)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキ ン(EC)など、いくつかの成分があります(図)。私達は、これまでに報告されている研究例を調べたところ、概ねガロイル基を持つカテキン類が持たないも のに比べ、生理活性が高いことがわかりました。すなわち、ECよりもECgの方が効果が高く、EGCよりもEGCgの方が効果が高いということです。私達 は、このように、ガロイル基を持つECgやEGCgの生理活性が、そうでないECやEGCよりも高いことに興味を持ちました。
 これまでの研究において、ガロイル基を持つカテキン類が高い生理活性を持つ真の理由は、化学的に解明されていませんでした。私達は、各カテキン類の細胞 膜に対する親和性が異なることが、活性発現に影響を及ぼしているのではないかと考えました。すなわち、細胞やウイルスの周りを覆っている脂質二重膜に対す る親和性の強弱が、カテキン類の生理活性発現に関係しているのではないかということです。
 そこで、私達は生体膜(脂質二重膜)のモデルとして、リポソームを使うことを考えました。リポソームとは、リン脂質を水溶液中に懸濁し、様々な処理をす ることによって調製される閉鎖小胞です。リポソームは、膜に作用する物質の作用機構を解析する際の生体膜モデルとして、多くの研究が行われています。
 私達は、このリポソームを用いて、各カテキン類の脂質二重膜に対する親和性の強さを比較してみました。その結果、予想していた通り、ECgやEGCgな どのガロイル基を持つカテキン類がECやEGCよりも脂質二重膜への親和性が高いことがわかりました。この事実は、これまでに報告されていましたカテキン 類の生理活性の強さとも一致していました。さらに、カテキン類の立体的な化学構造が活性発現に重要な意味を持っていることも明らかにしました。
 近年、茶カテキン類の生理機能に関する研究が益々盛んになってきていますが、このような基礎的なデータを積み重ねることで、カテキンの生理活性発現メカニズムを解明していくことができると思われます。

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(くまざわ しげのり)             月刊「茶」2001年2月号より

 


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