お茶の科学(サイエンス)

機能性(2)  抗アレルギー作用


農林水産省野菜・茶業試験場

山本(前田)万里


 アレルギーは、過度の免疫反応の一つであり、原因物質(アレルゲン)となる花粉、ダニなどの植物・動物・微生物・食物・薬物・化学物質に過剰反応して、 免疫を担当している細胞が活性化され、その際、作られて放出される生理活性物質により体内のいろいろな組織が傷害されるものです。近年、アレルギー疾患が 増加して一つの社会問題にもなっています。
 そこで、アレルギーを改善するため、茶から抗アレルギー成分を見つけようという研究が始まっています。数人の研究者が今までに、茶葉中のカテキン、特に エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどのエステル型カテキン類およびカフェインが抗アレルギー作用を示すことを報告しています。  私たちは、静岡大学・静岡県立大学・九州大学の研究者とともに、茶の機能性に関するプロジェクト研究を平成8年度から行ってきました(生研機構基 礎研究推進事業)。そし て、マウスのマスト細胞(初期アレルギーに強く関わっている細胞の一つ)やマウスを使って、抗アレルギー作用をもつ成分の検索を行ってきました。その中 で、「べにほまれ」「べにふうき」「青心大方」などの特定の品種から抗アレルギー作用の強い特殊なカテキン類を見つけてきました。このカテキン類は、今ま で抗アレルギー作用が報告されてきたエピガロカテキンガレートより強い抗アレルギー作用を示しました。また、それらの物質の作用メカニズムについても検討 しており、マスト細胞内の情報伝達系(かゆみを起こす物質が細胞の外へ放出される以前に、花粉などのアレルゲンが入ったという情報が伝わっていく流れ)へ も影響することがわかってきました。まだ、この物質以外にも抗アレルギー作用の強い物質があるものと考え、現在、新たな成分も検索中です。また、さらにア レルギーに関連するヒトの細胞も作製中で、将来的には、ヒトの細胞を使って、簡易に抗アレルギー作用の検索ができるようになると期待しています。
 茶はカテキン類だけでなく、フラボノイドを含め、様々なポリフェノール類を数十種類含有しており、また、発酵茶、半発酵茶、不発酵茶によってもその含 量、組成に違いがあります。今後、より抗アレルギー活性の強い物質として、カテキン類だけでなく、様々なポリフェノール類を検索し、その作用機作、食品へ の応用、他の食品との相乗作用などの研究に取り組んでいく必要があると考えています。また、このような研究を進めていくことにより、抗アレルギー作用を もった品種のお茶を実際に提供していきたいと考えております。 現在、茶の機能性を利用した製品がかなり開発・製造されています。食品であれば、虫歯にな りにくいということで、カテキン類を添加した菓子類、消臭作用を期待したガムやキャンデー。食品以外であれば、抗菌作用をうたった、茶染めタオル・靴下・ シャツや茶抽出物(カテキン類が主成分)を練り込んだマスク・シーツ・フィルタなど。消臭作用をうたった、茶抽出物を添加した家庭用消臭剤・スプレー・芳 香剤・歯磨き粉・トイレットペーパー。肌あれにやさしいということで、茶やハーブ入りの入浴剤、など。このような茶の機能性を利用した食品、製品は今後も ますます増えていくでしょう。
 今後、このような機能性素材としての「お茶」を考えたときには、従来の製茶法・品種・収穫適期などを見直していく必要もでてくるのではないかと予想され ます。また、茶の機能性の科学的な解析を体系的に進めることによって、企業での機能性製品の開発もさらに加速化し、消費者には、機能性をはっきり理解して いただくことにより、飲料としてのお茶の需要もますます伸びていくものと期待しています。

[やまもと(まえだ)まり]           月刊「茶」1999年10月号より

 


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